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12月 13

ルールライティングデザインについて

この記事は、Board Game Design Advent Calendar 2014の13日目として書かれました。

こんにちは、The Game Gallery管理人のHAL99と申します。ボードゲームはブログPodcastYoutubeなどで主にレビューを中心に情報を発信いていまして、ボードゲームは作っても自分用で配付したりはしていない人間です。

ただ、私の周りには昔からボードゲームをオリジナルで作る方がいつもいらっしゃったので、そのルール書きや校正のお手伝いをしばしばしています。そこで、この記事では、ボードゲームのルールライティングデザインについて書こうと思います。

ボードゲームにとってのルールマニュアル

様々なマニュアルが世の中にあふれていると思います。特にボードゲームと比較されるマニュアルといえば、PCゲームやコンシューマーゲームのマニュアルがあります。ただ、そうしたいわゆる電源系ゲームのマニュアルは「プレイ中のチュートリアル」などで「マニュアルを読まなくても取りあえず楽しめる」という事が許されています。また、家電などについても、よほど変な使い方をしない限り、取りあえず使ってみるという方も多いのでは無いでしょうか。

 

ところがボードゲームは違います。箱を開いてコンポーネントで遊んでいるだけでは、全くゲームが成り立ちません。入っているコンポーネントの意味と使い方がゲームによって異なっているからです。ボードゲームをゲームとして成り立たせる為には、プレイヤーの誰かがそのゲームのルールマニュアルを読み、ルールを理解し、コンポーネントの意味を熟知して初めて機能します。

 

つまり、ボードゲームについてくるルールマニュアルは、世の中にあふれている「取りあえず読まなくても良いけど、困った時に参照する物」ではなく「ゲームをプレイするために、ほぼ間違い無く読まれる事が前提」のマニュアルなのです。ここがチュートリアルなどが許されているPCやコンシューマーゲームのルールマニュアルとの差になります。

 

ゲームデザイナーにとってのルールマニュアルとプレイヤーにとってのルールマニュアル

ゲームデザイナーの方々がゲームを作り上げる過程は様々だと思います。コンポーネントの候補たちに触っているうちにアイディアが浮かぶ事、突然妖精さんが降ってきてルールのイメージがわき上がるものなど、それこそゲームが完成に近づいていく流れはいろいろあるはずです。

 

ゲームデザイナーの方が完成したルールマニュアルを作り上げるのは、多くの場合はゲームが完成した一番最後になるのではないでしょうか。つまり、ルールマニュアルを書いている時、ゲームデザイナーの方には作ったゲームのシステム、流れ、コンポーネントの使い方といった様々な要素が全て頭の中に入っていて、どこでもインスト可能な状態になっている事が多いと思います。

 

ところが、ゲームをプレイするプレイヤーの方は全く逆の立場でルールマニュアルに接します。それは、「プレイしたいと思っているゲームに対する情報がもっとも少ない状態」でルールマニュアルを読み始めるのです(なぜならルールを読まないとゲームがプレイ出来ないから)。このギャップがしばしばルールマニュアルの内容について問題を起こす要素の一つだと考えています。

 

ルールライディングデザインとは?

ルールライティングデザインとは、ゲームデザイナーの方々が頭の中から作り出した物をプレイヤーに正しく伝える事、このためのものです。ルールマニュアルを書くとき、漠然と頭に浮かんでいるルールを書き並べるのではなく、何は書くと決めて、何は書かないと決めている事、そしてその順番が決まっている事。これがデザインになります。

 

ルールマニュアルをデザインするための要素は様々なものがありますが、ボードゲームのルールマニュアルを書くためには、少なくとも以下の要素は整理した方が良いと思います。

 

A)プレイヤーのターゲット層

B)マニュアルの構成

C)用語

 

A)プレイヤーのターゲット層

これはプレイヤーのルールに対する理解度をどの程度の方々を想定しておくかです。

 

よくある例では「ダイスって何?」という方もかなりいらっしゃいます。逆に、トリックテイキングゲームであれば「マストフォローでトランプ無しです。4ハンドプレイして最もポイントを獲得したプレイヤーが勝利します」と概要を書いても十分通じる方もいらっしゃいます。

 

どういた習熟度のプレイヤーに対してルールマニュアルを書くことにするのかで、記述する量も書き方も変わってきます。

 

ルールマニュアルを書くときに、自分はどんなプレイヤーを想定してルールマニュアルを書いているのか、ということを具体的に書き出して置くのがオススメです(脳に入れただけだと、都合の良いようにルールマニュアルを書きならどんどん頭の中で解釈が変わっていくので危険です)。つまり、プレイヤーとして想定する人をデザインしておくのです。

 

このターゲットのデザインが出来ていないと、ある部分は妙に詳しく、ある部分は妙にざっくりとした説明になっているルールマニュアルが完成する危険性があります。逆に、これを決めておく事で、ルールマニュアルを査読するときに、「このターゲットのプレイヤーだと、この記述は不要」や「この表現では理解出来ないな」といった自己チェックができるようになります。

 

B)ルールマニュアルの構成

ルールマニュアルの構成は、この形が最高というものはありません。作り上げられたゲームによってそれぞれ異なる流れがあり、テンポがあるからです。ただ、新聞の1面の構成がどの新聞を見てもおおよそ同じように、なじみやすいルールの構成は存在します。

 

  1. ゲームの概要
  2. 勝利条件
  3. コンポーネント解説
  4. ゲーム流れの概要紹介
  5. ゲーム流れの詳細説明
  6. 例外紹介/効果解説等

こうした構成をあらかじめデザインしておくことで、書き漏れなどを防ぐ事ができます。ルールマニュアルを書くことに慣れていない時には、もう1段階ほり下げて構成をデザインをしておくとルールマニュアルを書く時に助けになります。

 

例えば以下の通りです。

 

  1. 1.ゲームの概要
    1.  ゲーム自体の世界観の説明
    2.  プレイ人数(推奨人数、2人用の時は巻末に特別ルールが書いてある等)
    3.  プレイ対象年齢
    4.  必要なスキルバックグラウンド説明(トリックテイキングを知っている事が前提等)

 

このようにデザインしておくことで、どのようなルールマニュアルになるかの全体像が可視化されやすくなります。ただ、ここで掘り下げたのは例ですので、完成したゲームごとに内容は調整する必要があるでしょう。

 

C)用語

用語は2つの点から重要な要素です。1つは、ルールマニュアルの中での言葉の統一性。もう1つは、珍妙な言葉の発見です。

 

言葉の統一性は、商用のルールマニュアルでもしばしば混乱されていてデザインが上手くなされていない部分です。

 

・「1つの言葉」なのに「場所によって意味が違う」

・「1つの意味」なのに「場所によって言葉が違う」

 

たとえば、「手札」と書いている言葉が、ある部分では「実際に手で持っているカード」を意味してしたのに、後半では「実際に手で持っているカード+場に出しているカード」の総称に変わっていたりすることは、「1つの言葉」なのに「場所によって意味が違う」例です。

 

また、「プレイヤーのターンになると各自は手札からカードを1枚選択します」と書いてあって、後の方で「プレイヤーの手番で選択したカードを云々」とかいているように、同じ事を指しているはずなのに言葉が異なるというのもよくある例です。

 

用語を上手く定義せずに頭からルールマニュアルを書いているとしばしばこうした「言葉のずれ」が発生します。ルールを書いているゲームデザイナーの方々はこの時にはゲームの流れがすっかり頭に入っているので、意外に違和感を抱かれないようですが、ルールを初めて読むプレイヤーになると、とたんに混乱してくる部分です。

 

ルールマニュアルを書いている際に、用語をメモしながら書き進めたり、ルールマニュアルを書き終えてから音読してみると割と防げます。

 

そして、もう1つの「珍妙な言葉」の発見です。

 

これは、プレイヤーからの視点ですが、そのゲームのルールマニュアルを読むまで見たことが無い用語がこれにあたります。たとえば、Magic the Gathering(以後、M:tG)の「タップ」がこれにあたります。「カードの効果を使う事を表す為に、カードを90度倒すことでこれを示す」=「タップ」という用語は、M:tGに慣れ親しんだプレイヤーには定着した用語ですが、それ以外の人にはそうでもありません。

 

※このタップを厳密にルールマニュアルで定義するためには、場にカードを出した時には、カードを出したプレイヤーから見て、縦方向に垂直になるようにカードが配置されていること。タップする際には、左右どちらに90度倒しても良い事といった説明はどこかで必要になるでしょう。Wikipdiaによると「タップは1度使用したカードがそのプレイヤーのターンでは再利用出来ない事を示す為に行われる 」とも書かれており、この記事を書いている私自身もこの効果を意識できておらず(無意識には理解している)、独自用語の定義の難しさを改めて知りました。

 

様々なゲームでは、そのゲームの独自性の為か他との差別化のためか、雰囲気作りのためかは分かりませんが、しばしばこうした「珍妙な言葉」が作り出されルールマニュアルに記述されていきます。こうした「珍妙な言葉」を「珍妙」で無くす為には、「その効果や意味」をゲームとしてデザインし、それを用語として定義し、ルールマニュアル上でプレイヤーに理解出来る形に仕上げる必要があります。

 

この3つの点をルールマニュアルをライティングする際に、あらかじめデザインしておくことで、よりわかりやすいルールライティングができると思います。

 

よりよいルールライティングデザインに向けて

先日、大阪でテンデイズさんが日本語を出された「インフェルノ」のトークショーに参加しました。その際に、グラフィックデザインを担当されたスーパーログさんが

 

「インストラクションカードの表はゲームの流れ、裏面は決算部分に集約したかったので、表面に出来るだけ情報を詰め込んで、プレイ中に裏返す必要を無くしたかった」

と語られていました。プレイヤーの視点から作成されている素晴らしいデザインだと思います。

 

こうした考慮もルールライティングデザインの1つの形だと思います。こうした「紙面構成」「挿絵」「プレイサンプル」などをさらにデザインしてゆくことによって、より素敵なルールマニュアルが仕上がっていくのではないかと考えます。

 

いろいろ書いてきましたが、これが正しいという答えはありません。ですが、市販ゲーム、ゲームマーケットで購入したゲームのどちらを問わず、ルールマニュアルを読んだ時点でプレイできずに断念してしまうゲームはまだまだあります。是非折角完成したゲームをプレイヤーが楽しくプレイしてもらえるように(次回作を出そうと思っているのであれば、特に)、こうしたルールライティングデザインに取り組んで頂けるとプレイヤーの一人としてありがたいです。

 

それでは、Happy Game Creating Lifeを


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1 comment

  1. black

    >沢山の会社、沢山の作者が作っているので難しい部分はあると思いますが、業界全体として、このあたりの考え方の標準化ができるとプレイヤーに優しいルールになると思いますね。
    本当にそう想います。なにかシンプルな統一基準みたいなものができるとわかり安いと思いますね。

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